九州電力の契約章(正式な名称は不明)について

 一覧(福岡市内) 
福岡営業所
箱崎営業所
西新営業所
前原営業所
東邦電力
黄色バッジ


 初めてそれを見た時には、漫然と「今はなくなった地名だな」と思った程度でした。ところがたびたびこれを目にするにつけ、あまりにも現在の地名と違
っているので、真剣に探してみたくなりました。

福岡営業所
西新営業所
営業所は確認したわけではなく仮にそう呼んでいるだけで、支店等別の呼称の可能性もあります。 

 はじめはこれがなにかわかずに、ただ今はなくなった地名が面白くて探していたのですが、「九」を○で囲んだマークがどうやら九州電力の旧ロゴであ
ろうということがわかり、九州電力の契約章だろうと想像しました。(その後、北九州市や武雄市で「九電」と刻印されたものを見つけた。)

 これはモルタル・サッシ窓のお宅で見つかることはほぼなく、木板張り・土壁造りの住宅や、モルタル造りでも木枠窓のお宅からしか見つかりません。木
板張りの古そうなお宅でも、サッシ窓にリフォームされていると、玄関も同時にリフォームされていると思ってよく、まず見つかることはありません。戦後の
70年は治安が悪化し続けた70年ですので、玄関がリフォームされずに、木枠板ガラスの開き戸のままというのは奇跡的なことです。

 これを玄関に見つけて門前からチャイムを押しても、空き家なのか応答がないことも多くて、あきらめることもありますし、そもそも豪邸と呼ばれるような
家は門から玄関が見えず、古そうな建物でもこれがあるかどうかさえ分かりません。あることがわかれば厚かましくチャイムを鳴らしますが、あるかどう
かわからないのにインターフォンで「玄関に九電の契約章が貼ってありますか?」と聞いても、誰も自分の家の玄関にそのようなものが貼られている認識
はないでしょう。

 これがいつ貼られたかですが、正確な答えは持っていません。九州電力の設立が1951(昭和26)年5月ですから、それ以降であることは間違いあり
ません。木板張り(もしくは初期の木造モルタル)・木枠窓・板ガラス開き戸の玄関のお宅からしか出て来ないこと、福岡市が住居表示を実施(1962<昭
和37>年より順次)する前の地名であることから、一斉ではないにしても、昭和30年代に貼られたのではないかと推測しています。(下に貼られた時期に
ついて考察しています。)

 九電に聞けばわかるのかもしれませんが、まずはWEBなどに公開しなければ「これこれこういうものです」と言っても伝わりそうもなく、このページの公
開前には聞いていません。企業には書類の保存期限がありますので、こういうものって案外資料が残っていなかったりします。(西鉄が高架工事を始め
てから自社の旧駅舎跡を地中に見つけ、工期が延びると言っているのはその典型でしょう。)

北九州市八幡東区からは数字のみのタイプが
佐賀県武雄市からは地名入りで

 私は街を歩いて古いお宅を見つけると玄関を覗きこむ癖がついていますが、北九州市八幡東区からは数字のみのタイプが、久留米市や武雄市及び
武雄市の旧北方町域のそれぞれ一部からも見つかっています。これらは偶然に見つけただけで、今はとてもそこまでは手を広げられません。

 私は個人的にこれを九電バッジと呼んでおり、本ページ内でもそう表記します。

 同じく九州電力の契約章と思われるもので、黄色地に数字だけのものも少数ですが見つかります。これは別ページを建てて掲載しています。

黄色地に番号のみの九州電力バッジ
電燈番號章は東邦電力のもの

 また、さらに古いものであろう「電燈番號」章が、ごくたまにですが見つかります。こちらも別ページを建てて集めていますのでそちらをご覧ください。


 本ホームページは福岡県立図書館のデジタルライブラリーから近代福岡市地図を参考にしています。九電バッジが貼られたのは戦後のことですが、
webでリンク可能なちょうどいい地図を他に見つけられなかったことから、昭和15年最新福岡市地図を中心に、昭和17年最新福岡市地図(戦時の影響
で軍関係施設が一斉に姿を消すなど、信頼性に欠ける部分がある)を相補として、また15年・17年地図から漏れた地域は昭和元年福岡市及び近郊実
測図も参考にしています。15年・17年地図から15〜20年後のことですが、地名が大幅に変わっている地域もあり、古い地図と見比べることで逆に戦
後復興のスピードを感じていただければと思います。

 福岡営業所管内にしても半分以上の頭番でまだ見つかっておらず、当然、天神地区や博多駅前地区では全滅している町も多数あるのでしょうし、今も
建て壊しで人知れず消えているバッジがあるのでしょうが、焦っても仕方がないのでこれからもぼちぼち町を歩きます。そのうちに人の家を覗きこむ不審
者として、警察に捕まりかねませんが。

 地名の参考として、NTTの電柱表示や公園・橋等を掲載しています。NTTの電柱表示は「○○向き線」の意味で、必ずしもその場所の地名を表している
わけではありませんが、新旧の地図と照らし合わせて、なるべく当該地域にあるものを使っています。(域外のものはその旨表記しています。)

 福岡市の一部では、旧地名をモニュメントとして設置してありますが、地名の名残を歩いて探すのが目的ですので、モニュメントは地名考察の補強とし
てのみ使い、それ単独では掲載していません。

 最後に、いかなる差別も意図していません。歴史をさかのぼろうとする時、地名を掘り起こそうとする時、差別はいつも敵です。これだけ住宅が建ち込
み、人が自由に行き来する現代に於いて、地名による差別など鼻くそほどの意味も持ちません。差別につながる二次利用は固くお断りします。

 そして誰もこんなものに興味を示さないでしょうが、もし興味を持って探されるのならば、個人のお宅の敷地内にあるということを十分に配慮してくださ
い。私が一番恐れるのは、「こんなものが貼ってあるから、玄関を覗かれる」と家主さんに剥がされてしまうことです。本来ならば、丁目だけではなく街区
符号(番)まで記載した方が街の広がりがわかるのですが、そういう意味もあり「丁目」までしか特定していません。

 当ホームページ内に於いて別途記載がないものは、全て2020年1月1日の公開です。南区外に取材を広げたのが2019年夏前ごろですから、次ペ
ージ以降の九電・東邦電力のバッジは、2019年夏の時点で全て民家の玄関先に現存したものです。


2021/04/01 追記
 西新営業所内に於いて、福岡西が後に西新になったと想像していると記載していますが、箱崎営業所管内で福岡東を見つけるつけ検討した結果、福
岡西・福岡東の方がそれぞれ西新・箱崎よりも新しいのではないかと考えていますが、今のところは確証がありません。

2022/05/15 追記

 箱崎営業所は001下原から始まり、003〜005が香椎、008〜010が浜男、011〜013が下原と、昭和30(1955)年4月に福岡市へ編入され
た、(旧)糟屋郡香椎町から頭番が振られています。下原と隣接する糟屋郡新宮町原上の頭番は166です。

 一方、昭和35(1960)年に福岡市に編入した(旧)糟屋郡和白町は、下和白が169〜171、駅前(上和白)172、塩浜172、奈多175〜180を確
認しています。旧和白町三苫(未発見)と隣り合う糟屋郡新宮町湊は頭番181ですから、新宮町原上(161)・旧和白町(169〜180)・新宮町湊(181)
は頭番が連続しています。

 これらから、旧香椎町は福岡市として扱われ、旧和白町は糟屋郡として扱われていると言えるでしょう。よって、箱崎営業所管内で九電バッジが貼られ
たのは、香椎町が福岡市に編入された以降、かつ和白町はまだ福岡市に編入されていなかった、昭和30年から昭和35年の間ではなかったかと推測
しています。そして、福岡営業所や西新営業所に於いても、同時期もしくはそれほど離れていない時期ではないかと感じています。


                                                                               追記 ここまで
 地図について

 〇福岡県立図書館デジタルライブラリーの近代福岡市地図は、すべて北が上ではなく海が上です。

 〇現代の街区符号(番)は道路で囲まれた一画を指す場合が多いですが、この時代は通りに町名が付いており、通りを挟む両側が一つの町や
   丁目になっています。

 〇「地図には載っていない地名」「昭和15年最新福岡市地図には載っていない」等の表現が出て来ますが、必ずしも地名がなかったわけではない
   と考えています。(○○ヶ丘・××新町・複数の地名から一文字ずつを取った造名等以外は、ほとんどが江戸時代からの小字でしょうから。)

 その他記載のルール

 ○地域によっては複数枚の九電バッジが出て来ますが、複数枚見つかったの意味で最大2枚を掲載しています。
   黄色バッジは数が少ないのと、 青バッジとリンクさせていますので全部を貼っています。

 〇今さらこの番号から個人が特定されるとは思っていませんが、個人の契約番号だったものをさらすわけですから、一応一部にモザイクを掛けます。
   基本は下二桁目にモザイクを掛けますが、015と045などそれだと区別出来なくなる場合は、末尾にモザイクを掛けています。

 〇個人宅にあるものはモザイクを掛け丁目までしか公開していませんが、公民館等公共施設にあるものは、モザイクを掛けずに場所を特定します。
   その他商店などにあるものはモザイクは掛けますが、敷地内に入らなくても道路から見られるものに限り場所を特定しています。

 ○マンション・アパート名や駐車場の名称も地名を確定させる補強として使いますが、その地に根差した地名名字の方もいらっしゃいますので、
   地名なのかオーナー名なのかをその都度判断します。

 〇竪筋・横筋について 
   筑前國續風土記の福岡町欄では、「簀子町大工町本町呉服町西名島町東名島町、これ他国より城下を通る大道なり。東西へ通る竪筋なり。」
   と東西筋を縦(竪)筋としています。一方、福岡100上竪町・福岡315下竪町や箱崎059竪筋は南北筋です。

   混乱しますので竪筋・横筋は使わず、きれいに東西・南北ではない筋もありますが、だいたいの向きで東西筋・南北筋としています。


戻る
戻る




福岡営業所
福岡営業所
箱崎営業所
箱崎営業所
西新営業所
西新営業所
前原営業所
前原営業所
東邦電力 電燈番號章
東邦電力 電燈番號章
福岡市(及び近郊)地名一 覧
福岡市(及び近郊)地名一 覧