『児玉大将は港内にある軍艦の状況を偵察するために第七師団参謀の白水中佐、総司令部の国司参謀、それに連合艦隊から派遣されていた海軍中佐島村参謀(?)の三人を現場に出張せしめた。二0三高地頂点の我が兵は僅か百名ぐらいであり、敵が絶えず砲撃するのでただ焦げついているばかりで、危険この上もない場所である。三人は十中の八九まで生還は期せられないので、決死の身支度をを整えて二日の朝司令部を出発した。
白水参謀は乃木大将の部下であったから、その時乃木大将は「白水君、白水君」と呼び止めてツカツカと進み出て握手された。その眼には涙が光っていた。生別死別を兼ぬといったような劇的シーンに幕僚一同は感激した。このとき児玉大将は冷然としてソッポを向いていられた。如何にも情の乃木、智の児玉という感が深かったと。』
この話は「日露戦争秘話」からの出典であると記されている。
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